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JX金属グループのCSRのルーツ

煙害問題を通じた地域との共生

当時は、製錬の際に発生する亜硫酸ガスを回収する技術が確立されておらず、工場からの排煙によって周囲の森林・農作物に被害が広がっていきました。煙害に対する賠償義務の法律もない時代でしたが、初代庶務課長・角弥太郎を中心に地域住民への補償を行いました。

補償とともに進めたのが煙害の抑制です。しかし、当時の技術では排煙の拡散・希釈は難しく、度重なる試みも失敗が続きました。そこで、久原は排煙を広域拡散させるため、高さ世界一(当時)となる大煙突の建設を提唱。約3万7,000名の人員と巨額を投じ、1914年に155.7メートルの大煙突を完成させ、煙害を激減させることに成功しました。さらに久原は、荒廃した山に緑を取り戻すべく本格的な植林事業を開始。耐煙性の高い大島桜など延べ約1,200ヘクタールにも及ぶ植林を行いました。

従業員が安心して働ける職場づくり

さらに久原は「企業にとって人は財産である」という考えのもと、従業員が安心して働ける職場づくりに着手しました。家族と一緒に生活できる住居はもちろん、学校、病院、鉄道、娯楽施設などを設けた総合的なまちづくりを進めたのです。

その思想を受け継いだ角は、「質実剛健・質素勤勉を奨励しつつ、従業員全員の幸福を考えること」を信念とし、職場だけでなく社宅においても従業員間の調和を目指しました。このような職住一体の環境により、従業員を尊重する風土が育まれ、従業員の間にも連帯感が育まれました。「一山一家」と呼ばれるこの考え方は、現在も当社グループに引き継がれており、役職や年齢、性別を問わず自由な意見交換ができる、風通しの良い職場環境が維持されています。

創業者・久原房之助の言葉 創業者・久原房之助の言葉
映画『ある町の高い煙突』公開記念特別対談 大井 滋 × 松村 克弥 氏 映画『ある町の高い煙突』公開記念特別対談 大井 滋 × 松村 克弥 氏

2019年6月22日、日立市のシンボル・大煙突をめぐる実話に基づいた映画『ある町の高い煙突』が公開されました。
本作品は新田次郎氏の同名小説を原作に、地域と企業が煙害を克服しながら共存共栄を目指す姿が描かれています。
今回は映画の公開を記念して、作品の魅力と当社グループのCSRのルーツについて語り合っていただきました。

今回の映画化はどのような経緯で始まったのでしょうか?

現在の大煙突

現在の大煙突。1993年に下部3分の1を残して倒壊したが、今も日立市のシンボルとして愛されている。

松村:7年ほど前、茨城県を舞台に近代日本美術の先駆者・岡倉天心の半生を描いた『天心』という映画をつくりました。その上映会でひたちなか市を訪れた際、日立の工場で働いていたという人から、新田次郎さんの小説『ある町の高い煙突』を紹介していただいたんです。新田次郎さんといえば、『八甲田山 死の彷徨』や『劒岳 点の記』など、大自然を舞台にしたドラマを描く作家ですが、環境問題を描いた作品があるということは知らなくて。現実にこんな話があったんだということに驚きました。そこで、茨城3部作の集大成として『ある町の高い煙突』の映画化に取り組むことにしたんです。

現在の大煙突

現在の大煙突。1993年に下部3分の1を残して倒壊したが、今も日立市のシンボルとして愛されている。

大井:私が映画化の話を初めて耳にしたのは、新年の挨拶に茨城県を訪ねた時でした。当時、私は社長として、創業者の想いや、先達が取り組んできた業績、あるいは苦難を乗り越えてきた歴史、そういったところに経営者としての学びを求めていたときでした。そうしたタイミングで映画化の話を聞き、うれしく思ったことを覚えています。

制作過程で気をつけられた点はどんなことでしょうか?

関根三郎煙害と闘うことを決意する

地主の家に生まれた関根三郎(井手麻渡:左)は、煙害の惨状を目の当たりにし、外交官になる夢を捨て、煙害と闘うことを決意する。
映画「ある町の高い煙突」劇場公開中
配給エレファントハウス©2019K ムーヴ

松村:原作が名作ですから、やはりその魅力を崩さないように気をつけました。ただ、人間同士の葛藤であったり、悲劇的な出来事を乗り越えるといったことが描きたいテーマでもあったので、そうした場面を原作よりも増やしました。実在の企業をモデルとしたストーリーですが、我々の意向を尊重していただき、JX金属グループの皆さまには感謝しています。

大井:一度、撮影現場にお邪魔したことがあります。そのときは、仲代達矢さん(関根兵馬役)が撮影されているときでして、「あまり近寄ってはいけないな」と思って遠くから拝見していると、松村監督に「どうぞ、どうぞ」と言っていただいて、役者の皆さんともお話をすることができました。特に仲代さんには「このストーリーにいたく感銘しました、役者冥利に尽きます」とおっしゃっていただいて、非常に有難かったです。

お二人の印象的な場面を教えてください。

松村:関根三郎を代表とする村の青年たちが集まって議論を繰り広げるシーンが気に入っています。六平直政さんが演じる村長に触発されて、村人たちの意見が割れ、お互いに非難し合ったり……。「この青年たちはこれからどうしていくんだろう?」と、観ている方もこのあたりから、ぐっとストーリーに入っていけると思うんです。若手からベテランの俳優さんたち、演出部のスタッフたちが力を結集してくれて、私の演出をはるかに超えた名場面になったと感じています。

関根三郎煙害と闘うことを決意する

地主の家に生まれた関根三郎(井手麻渡:左)は、煙害の惨状を目の当たりにし、外交官になる夢を捨て、煙害と闘うことを決意する。
映画「ある町の高い煙突」劇場公開中
配給エレファントハウス©2019K ムーヴ

大井:あの議論のシーンはとても迫力がありました。それから作品の冒頭も素晴らしいですね。「一体何が起こるんだろう?」と、ミステリーのような緊迫した始まりで非常に引き込まれ、監督の演出の素晴らしさを感じました。

松村:ありがとうございます。

大煙突建設を決断する木原吉之助

日立鉱山の庶務係で住民側との交渉役を務める加屋淳平(渡辺大:左奥)の粘り強い説得により、木原吉之助(吉川晃司:右)は、ついに大煙突建設を決断する。
映画「ある町の高い煙突」劇場公開中
配給エレファントハウス©2019K ムーヴ

大井:私が何といっても好きなのは、ラストで現在の日立のまちをバックにナレーションが流れる瞬間です。経営者というものは理想を持っていなければならないと、自分自身が問われている気持ちになりましたし、創業者・久原房之助(映画では木原吉之助)の想いを伝えていかなくてはならないと背筋が伸びる思いでした。

大煙突建設を決断する木原吉之助

日立鉱山の庶務係で住民側との交渉役を務める加屋淳平(渡辺大:左奥)の粘り強い説得により、木原吉之助(吉川晃司:右)は、ついに大煙突建設を決断する。
映画「ある町の高い煙突」劇場公開中
配給エレファントハウス©2019K ムーヴ

松村:本作のエンディングは、煙害で荒廃した山々やまちが見事に甦ったという事実を、美しい桜の風景で表現している訳ですが、これこそが活字では表現できない、映画ならではの強みであると思います。

大井:映画ならではの強みといえば、大煙突の建設シーンも外せません。

松村:あれは日立から少し上に行ったまちに廃校がありまして、そこに3階建てほどの足場を組みCGとの合成でつくりました。足場が崩れるシーンを観たときに、人の映画を観ているような感覚で「よくできてるな」と思ってしまいました(笑)。

大井:エンターテインメントとしても魅力ある作品だと思います。関根三郎と加屋千穂の恋愛場面も決してストーリーを壊すことなく、しっかりと時代を映しているように感じられるし、大煙突建設に至るまでのストーリーを引き立てる効果を上げていると思います。

作品を通してJX金属グループのCSRについて想うことを教えてください。

大井:社会・環境に優しい事業運営をしなければ、企業の持続的な発展はあり得ないのですが、それを100年以上も前にやっていたという事実に、改めて誇りに思いました。例えば、煙害に対する金銭的な補償を続けたとしても、地域の環境が破壊され、住民がいなくなってしまったら、事業は続けられなくなっていたでしょう。企業が持続的に発展するためには、短期的な利益に拘泥せず、地域住民と手を携えて、ともに発展していくというビジョンが描けていなければなりません。

松村:久原さんは自分たちだけが儲かればいいという価値観は全く持っていなくて、地域住民の幸福ありきだという価値観を持っていらした、当時としては珍しい企業家だったと思います。地域の課題と真摯に向き合い、地域とともに煙害と闘い、ビジョンを持って発展させていったからこそ今日の発展があります。ですから、日立の大煙突は、日立の誇りであり、日本のCSRの原点とも言えるものだと思います。

大井:それから映画でも表現されていますが、「愛する人のために」という心。これが大事ですよね。家族のために頑張るぞという気持ちが、同僚のため、地域のためにと、広がりを見せていくのだと思うんです。そして、目標を掲げたからには「最後までやり抜く」という姿勢。言ってみれば、これが当社グループの創業者以来のDNAだと定義して、後の世代に引き継いでいこうと強く思いました。

松村:実はそこが本作で最も描きたかったテーマです。困難というのはいつの時代もありますけど、諦めないことが奇跡を生むんだと作品を通して強く感じました。そして、困難を乗り越えて起きた奇跡というのは、100年後も残るものだと思います。関根三郎の台詞の中に、久原さんに対して「あなたのことを100年忘れません」という言葉があるのですが、そうした想いを込めています。

大井:この作品は、新しく入社してくる人たちにもぜひ観てもらいたいと思っています。私たちの事業活動が単なる社会的責任で終わるのではなくて、最終的には持続可能な社会の実現、すなわちSDGsへの貢献に向かっていくんだという精神を、この映画から学び取ってほしいと感じます。私は特別理事として、次世代を担っていく若者が目標に向かって頑張っていけるよう支援していきたいと考えていますので、そうした意味でも、良いきっかけを与えてくれたと感謝しています。

松村:JX金属グループさんにはグローバル企業として、国内外さまざまな地域で働かれている人がいると思います。この映画がたくさんの地域で上映されて、一人でも多くの方に届くことを願っています。

松村大井:今日はどうもありがとうございました。

  • ある町の高い煙突ポスター
  • 『ある町の高い煙突』
    2019年6月22日(土)
    全国ロードショー
    監督・脚本 松村克弥
    脚  本 渡辺善則
    原  作 新田次郎
    出  演 井手麻渡、渡辺大、小島梨里杏、
    吉川晃司、仲代達矢ほか
    企画協力 文藝春秋
    公式サイトはこちら
  • Story

    1910年、茨城県久慈郡入四間の地主の家に生まれ育った関根三郎(井手麻渡)は、隣村の日立鉱山による煙害が発生していることを知る。村の権力者である祖父・兵馬(仲代達矢)は事態を重く見て鉱山会社へ掛け合いに行くが、補償するので煙害は我慢するよう一方的に言われてしまう。受験を控えた三郎を心配する兵馬は、30年前に村長として採掘権を許可したのは自分だと告げるが、その5日後に亡くなってしまう。三郎は祖父の遺志を継ぎ、進学も外交官になる夢も捨てて、煙害に立ち向かうことを決意する。

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