ニュースリリース

2023年度

2024年1月31日

JX金属株式会社

100%リサイクル電気銅供給モデルの新提案  ~お客様と紡ぐ資源循環~

 JX金属株式会社(社長:林 陽一、以下「当社」)は、第三者認証機関の協力のもと、マスバランス方式を用いた100%リサイクル電気銅を上市します。

 当社では、サステナブルカッパー・ビジョン(※1)に基づき、グリーンハイブリッド製錬(※2)の推進とともに、お客様からのニーズを広く収集し、資源循環、脱炭素、供給安定性、原料トレーサビリティの向上、並びに経済合理性といった複数の視点に立って、市場への最適な銅の供給スキームの検討を重ねて参りました。マスバランス方式(※3)は、100%バイオ燃料や100%リサイクルプラスチック、アルミ等において既に用いられている手法であり、当社においても同方式にて100%リサイクル電気銅を商品化することとしました。

 

 当社は、マスバランス方式を用いて以下の2種類の100%リサイクル電気銅を提案します。いずれも国内の銅製錬業界初の試みであり、特に①は「資源循環」と「脱炭素」という社会課題の解決策を当社とお客様が共創していく先進的な提案です。

 

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(図1)100%リサイクル電気銅の供給モデルについて

 

① PCL100/mb (Partnered Closed Loop 100% mass balance method)

 本商品は、お客様の製品に組み込まれていた銅を再びお客様自身の製品に戻すことを可能とします。具体的には、お客様が回収した使用済み製品由来をはじめとするリサイクル原料に含まれる銅の相当量を、100%リサイクル電気銅としてお返しするもので、「閉じた水平リサイクル」と言えます。

 従来から当社では、リサイクル原料と銅精鉱を混合して、電気銅を市場に供給してきました。このため、本スキームのもとでも、製錬・リサイクルプロセス自体は従来と同様ですが、マスバランス方式を用いた本スキームによってはじめて、原料トレーサビリティが明確(お客様からのリサイクル原料由来)で、CFPの面で優位性のある(※4,5)、高品質な(従来品質と変わらない)100%リサイクル電気銅をお客様に供給することが可能となります。

 

② MR100/mb (Mixed Recycle 100% mass balance method)

 本商品は、JX金属グループのリサイクル原料回収ネットワークを通して市中から収集したリサイクル原料を基に、マスバランス方式を用いた100%リサイクル電気銅を供給するものです。「閉じた水平リサイクル」ではないという点で①と異なるものの、その他の点においては同様の特徴を有します。

 

 当社は、2024年度中に本商品を上市し、パンパシフィック・カッパー株式会社(社長:堀 一浩)から販売する予定で、既に一部のお客様との間で試験的な取引に向けた協議を開始しています。なお、これらのマスバランス方式を用いた商品の実現のため、ISO 22095 Chain of custodyに基づき、ASI(※6)やThe Copper Mark(※7)のChain of custody standardを参考に、独自のChain of custody standardを定め、本コンセプトの実行管理体制の妥当性について第三者認証機関による検証作業を進めています。

 

 なお、当社では、本商品の社会実装を目指す活動を「Cu again(シーユー アゲイン)」プロジェクトとして始動します。「Cu again」とは、電気銅(Cu)が、社会での役割を終えてスクラップとして戻り、リサイクルを経て、繰り返し(again)、未来の社会を支えていくという願いを込めたものです。さらに意匠には、銅の動脈と静脈に関わる皆さまとともに無限(∞)の循環を目指すイメージを表現しています。

 

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  (図2)「Cu again」の意匠

 

 今後も当社は先端素材、金属製錬、リサイクル、資源開発の一貫した事業運営の中で、‟サステナブルカッパー・ビジョン"で掲げる様々な施策を通じ、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 

以 上

 

※1 「サステナブルカッパー・ビジョン」の詳細は、2022年8月3日付プレスリリース「"サステナブルカッパー・ビジョン"の策定について」および同リリース別紙「サステナブルカッパー・ビジョン JX金属が目指すサステナブルな銅の姿」をご覧ください。

※2 「グリーンハイブリッド製錬」とは、当社グループの佐賀関製錬所において推進している、リサイクル原料と銅精鉱の双方を活用し化石燃料がほぼ不要な製錬プロセスであり、2040年にリサイクル比率を50%までに引き上げることを目指しています。同製錬所では、CO2フリー電力の導入も完了しており、既に低CFP製錬プロセスで電気銅等を製造していますが、マスバランス方式を用いた100%リサイクル電気銅は、CFPの面で更なる優位性が得られることが見込まれます。詳しくは「JX金属 SDGsへの取り組み」をご覧ください。

※3特性の異なる原料が混合される場合に、ある特性を持つ原料の投入比率に応じて、生産する製品の一部にその特性を割り当てる手法です。

※4 当社は国内銅製錬業界で初めて電気銅のカーボンフットプリントの定量化、その算定結果についての第三者認証の取得を完了しています。詳細は、2023年7月7日付プレスリリース「電気銅のカーボンフットプリントの算定と、算定結果の第三者保証取得について」をご覧ください。

※5電気銅のカーボンフットプリント(CFP)において大きな割合を占める銅精鉱ではなく、リサイクル原料のみに由来するとみなすため、CFPは当社既存品よりも小さいとみなすことができます(当社試算に基づく)。

※6 ASI(Aluminium Stewardship Initiative)のChain of custody standard は次のとおりです。

https://aluminium-stewardship.org/asi-standards/chain-of-custody-standard

※7 The Copper MarkのChain of custody standard は次のとおりです。

https://coppermark.org/standards/chain-of-custody-standard/