ニュースリリース

2019年度

2019年11月22日

JX金属株式会社

高密度造形を可能とする3Dプリンター用純銅粉の開発について ―電子ビーム方式で99.94%、レーザービーム方式で98.56%の相対密度を実現―

 JX金属株式会社(社長:村山誠一、以下「当社」)は、従来の課題であった3Dプリンターを用いた造形物の密度不足の課題を解決できる、金属3Dプリンター用純銅粉(以下、「本開発品」)を開発いたしました。今後、2020年年頭を目途に、サンプル品の提供を開始する予定です。

 近年、複雑形状の造形が可能であることや、少量生産、オーダーメードにも対応できるという利点から、金属3Dプリンターの実用化の機運が上昇し、実際に航空分野や自動車分野、医療分野等での採用が始まっております。しかし一方で、金属3Dプリンティングの材料となる金属粉の製造については、いまだ技術面での課題も多く、特に純銅粉を用いた3Dプリンティングは、造形物の相対密度(※1)が低いという点がネックになっています。

 こうした課題に対し、本開発品は、粉体の表面に特殊な表面処理を施し表面の酸化を防止しました(図1参照)。この特殊な表面処理を施した銅粉を用いて、電子ビーム方式で造形を行ったところ相対密度で99.94%を達成し、かつ仮焼結(造形の前工程となる予備加熱プロセス時に発生する銅微粉同士の固着)を抑制できました(※2)。この効果によって、微細で複雑な自由度の高い造形も可能となります(図2参照)。またレーザーメタルデポジション方式での造形でも相対密度98.56%という高い結果が得られています。
 今後、こうした優れた特性を生かし本開発品がサーバー用のヒートスプレッダーや自動車用の水冷冷却ユニットなど、さまざまな用途向けにご採用いただけることを期待しております。

 当社では、本開発品をはじめとして、グループ会社である東邦チタニウム株式会社・トーホーテック株式会社によるチタン系合金粉、同じくH.C. Starck Tantalum & Niobium社によるタンタル、ニオブ系合金粉など、3Dプリンター向け金属粉のラインアップの拡充を図っております。今後もグループ一体となり、お客様からの幅広いご要望にお応えしてまいります。

 なお、今回開発した純銅粉は、12月4~6日に幕張メッセ(千葉県幕張市)で開催される「第6回高機能金属展」に出展する予定です。ぜひ会場まで足をお運びください。

 

以 上


(※1)積層造形物の実測密度を理論密度で除した値の百分率
(※2)東北大学金属材料研究所加工プロセス工学研究部門 千葉教授との共同研究


<図1:表面処理による酸化防止効果>
 21091122_01_01.jpg

<図2:表面処理有り/無しによる造形物の違い(イメージ)>
 21091122_01_02.jpg
 ※仮焼結(予備加熱プロセス時に銅微粉同士の固着)が起こらないため、繊細で複雑な造形が可能



<参考:表面処理を施した3Dプリンター用純銅粉>
21091122_01_03.jpg


<参考:各方式で作製した造形物の導電率>

電子ビーム方式

レーザーメタルデポジション方式

101 %IACS

100 %IACS